お気楽CINEMA&BOOK天国♪

お気楽CINEMA&BOOK天国♪

金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔴本「猫旅リポート」/有川浩(講談社文庫)*一人と一匹の永遠の絆が爽やかな涙を誘う、ファンタジー小説の名作*レビュー4.3点

旅猫リポート (講談社文庫)

旅猫リポート (講談社文庫) 

猫好きの青年とその飼い猫との固い絆を、慈しみの眼差しで描いたロード・ノベル。温かくて切なくて爽やかで、涙腺崩壊間違いなしの一冊。有川浩が世代を超えて幅広い層から支持されるのも分かる気がする。

【あらすじ】

野良猫のナナは、交通事故をきっかけに孤独な猫好きの青年サトルと暮らし始める。それから5年後……ある事情から、サトルはナナを手放すことになり、一人と一匹は、銀色のワゴン車に乗って、新しい飼い主を探す旅に出る。道中、サトルの旧友たちとの再会を通して、彼の複雑な過去が徐々に明らかになってゆく……。

【感想・レビュー】

誇り高き元野良猫ナナの軽妙なモノローグで始まるこの作品、軽いユーモア小説かと思いきや、複雑な大人の事情や繊細な子供心が痛々しくて、結構悲しい物語なのだ。しかし、ナナの抜群のユーモアとサトルの切ないほどの優しさ、大自然の美しい風景と旅先での旧友たちとの温かい交流、そして、このコンビの固い絆に救われて、読後は切ない感傷以上に爽やかな余韻を味わえる。

印象的なのは、元野良猫ナナの、いかにも猫らしい?プライドと孤高の生き方。これがなんともユーモラスで、自然に笑みが溢れる(この猫目線の語り口の上手いこと!)。そして、サトルの、すべての生きとし生けるものを包み込むような優しさと、自らの運命に静かに向き合う強さ……なるほど「優しさとは強さ」という言葉は、こういう意味だったのか、と腑に落ちる。

一人と一匹の永遠の絆が爽やかな涙を誘う、ファンタジー小説の名作。