🔴本「チャリング・クロス街84番地」書物を愛する人のための本/ヘレーン・ハンフ(中公文庫)は、映画も原作もオススメ!レビュー4.5点
チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)
サブタイトルは、「書物を愛する人のための本」。読書家のことではない。読むことだけでなく、書物の装丁、手触り、傷み、シミなど一切合切ひっくるめて、本が好きで好きでたまらない人のことだ。
【ストーリー】
1949年、ニューヨークの本好きの女性がロンドンの古書店に送った一通の手紙。そこからはじまる20年にわたる交流を往復書簡形式で綴った心暖まる名作(アンソニー・ホプキンスとアン・バンクロフト共演の同名映画の原作)。
【感想・レビュー】
映画も良かったが、原作も素晴らしい。読書の楽しみや待望の書物を手にする喜び。そんな純粋な「書物愛」が手紙の端々から感じられて微笑ましいし、それ以上に、手紙のやりとりを通して、それまで孤独だったアメリカ女性の人生が彩り豊かなものに変化していく様が何とも心地好く、アメリカ人のユーモア精神(なんて上品なユーモア!)とイギリス人の謹み深い態度(歴史を感じる紳士淑女の嗜み!)の相性の良さを羨ましく感じてしまうほど。
地味でささやかな作品ではあるが、年代物のウイスキーのように豊穣で芳醇。江藤淳の翻訳も冴えている。
本好きを自認する人なら是非とも手元に置いて愛でるべき一冊。