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🔴本「君と夏が、鉄塔の上」/賽助(ディスカヴァー文庫)感想*ほっこりしてじんわりくるファンタジー系青春小説*レビュー4.1点

君と夏が、鉄塔の上 (ディスカヴァー文庫)

君と夏が、鉄塔の上 (ディスカヴァー文庫)

【がんばれ中坊!】

またまた日常のせわしさにかまけて、ライフワークをサボってしまいました⤵⤵何事も始めるのは易しいけれど、続けるのは難しいもんですね。

反省して久々の読書です。今回は、鉄塔マニアの男の子のひと夏の体験を描いた賽助さんのファンタジー系青春小説。

入道雲、蝉の声、光る汗、夏祭り、初恋……いいですねぇ。15の頃の夏の風景が甦ってくるようです。あの頃に戻りたいとは思いませんが、この本を読んだら、一日ぐらいなら戻ってもいいかも、なんて思ったりもします。 

【あらすじ】

鉄塔マニアの地味すぎる中3の男の子、伊達くん。グデグデの夏休みの最中の登校日に、クラスメイトのお転婆な美少女、帆月さんからとんでもない話を聞かされる。……鉄塔の上に着物姿の男の子が座ってる⁉

その男の子は一体何者なのか?二人は、霊能力があると噂される不登校児のアウトロー、比奈山くんを巻き込んで、謎を解き明かそうとするのだが……。

【感想・レビュー】

中3時代も、はや半世紀前。あの頃、自分が大人になるなんてとても想像できなかったけど……ホント光陰矢の如しですね。今、どうにか思い出せる中学時代の風景は、雨の日の自転車置場、汚れた下駄箱、だだっ広いグラウンド、古い木造校舎……それと何人かのおバカなクラスメイトの顔ぐらいでしょうか。みんな今頃何してるんでしょう?

そんな懐かしい想い出を呼び覚ましてくれるこの小説、一番のお気に入りは、鉄塔マニア、廃屋マニア、工事現場マニアなどなど、とても中3とは思えぬ渋い趣味の面々が登場して、どーでもいいよな薀蓄を語るところです。

実際、鉄塔にこれほどいろんな種類があるなんて思ってもみませんでした。とんがり帽子鉄塔、料理長型鉄塔、烏帽子型鉄塔ww可愛いのやら厳ついのやらいろいろあって、まさに目から鱗の無駄知識!……でも、いいですねぇ。無駄なことに情熱を傾けられるのは若いうちだけ。こんな中坊、大好きです。

この作品の良いところは、学校に一握りしかいないヒーローではなく“その他大勢”の代表格のような伊達くんを主人公に据えたところ。見た目も能力も平凡で、そんな自分へのコンプレックスから万事に受け身、それでも衝動的な情熱に駆られるときもあって……と、この時期特有の男の子の幼さや自我の目覚めが嫌味のない素直なタッチで生き生きと描かれています。

一方、帆月さんはさすがに女の子、かなりブッ飛んではいますが、伊達くんに比べるとやっぱり大人です。この二人に比奈山くんを加えた異色の3人組の微妙な関係がなんとも微笑ましくていい感じ。きっと賽助さんもナイーブな方なんでしょうね。3人の間合いというか、距離感の描き方が絶妙です。

リアルとファンタジーが混在してややまとまりに欠けるストーリーではありますが、平凡な男の子が好きな女の子のために一度だけヒーローになる姿ってやっぱり読んでて気持ちがいいもんです。

ほっこりしてじんわりくる小説。オイラも一度でいいからヒーローになってみたかった!伊達くんがちょっぴり羨ましいです。