🔵映画「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」/(2014アメリカ)感想*少年の未来に幸いあれ!*レビュー4.0点
【少年の未来に幸いあれ!】
音楽映画は、ドラマと音楽の両方同時に楽しめるから結構好みのジャンルです。
“合唱”を扱った映画で印象に残っているのは、『歓びを歌にのせて(2004スウェーデン)』とか『コーラス(2004フランス)』とか。
この作品、『歓びを歌にのせて』の奥深さや『コーラス』の繊細さはありませんが、オーソドックスで分かりやすい映画だと思います。
同じ題材を扱っても、お国柄の違いが表れるところが面白いですね。
【あらすじ】
母子家庭に育ち、喧嘩や授業妨害など問題行動が絶えない12歳の少年・ステット。
ある日突然母親を亡くし、初めて会った父親からも養育を拒まれた彼は、校長の勧めで、名門合唱団を有する学校へ(寄宿生として)転校する。
初めは楽譜も読めず、教師にも反抗していたステットだったが、合唱団の指導者・カーヴェルの厳しい指導によって、次第に合唱の魅力に目覚めていく。
やがて、ステットはその才能を開花させ、合唱団の中心メンバーとなる。しかし、そんな彼の急成長を快く思わないソリストの少年から様々な嫌がらせを受ける。
そして、ついに我慢の限界を超えたステットは、少年に暴力を振るい、退学の危機に瀕してしまう……。
【感想・レビュー】
ストーリーとしては、ベタだとか、予定調和的とか批判はありそうですが、オーソドックスでフツーに良い映画だと思います。
仮にストーリーが物足りないとしても、合唱は本物。まさに“天使の歌声”です。少年たちの歌声を聴くだけでも一見の価値はある映画かと思います(ラストの歌は鳥肌もの!)。
また、この映画には、素敵なメッセージが込められています。
……変声期を迎えた少年に対し、教師が言います。「ボーイ・ソプラノという声は、ほんのつかの間神様から借りる声だ。やがて消える」。だったら、何であんなに厳しいレッスンを?と問う少年に対し、教師は「学ぶためだ」と答えます。
たぶん教師は、合唱を通して(努力とか忍耐とかチームワークとか)生きていく上で大切なことを学ぶことに意義がある、と言いたいのでしょう。これから長い人生を歩んでいく少年への最高のはなむけの言葉だと思います。
そのことは、「大切なのは生き方だ。キャリアじゃない」というカーヴェル先生の一言に凝縮されているように思います。
この映画、ステットに扮するギャレット・ウェアリングが可愛いです(永遠の少年像ですね……女性は母性本能をくすぐられるだろうと思います)
他にダスティン・ホフマン、キャシー・ベイカー、デブラ・ウィンガーといったそうそうたる俳優陣が名を連ねていますが、みんな控えめで抑えた演技。やっぱり主役は少年たち。よく分かってらっしゃいます。
孫のような少年たちに注ぐ大物俳優たちの柔らかく温かな眼差しがいいですね。気持ちが和みます(デブラ・ウィンガーはいくつになってもキレイ。ダスティン・ホフマンはかなり偏屈ですが)。
劇中、日本公演の経験がある少年らの口から“鮨”とか“サントリーホール”という言葉が出て来て、びっくり。この監督、日本びいきみたいで、ちょっと嬉しくなります。