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🔵映画「ドリーム」/(2016アメリカ)感想*“ガラスの天井”を破った女性たちの感動の実話*レビュー4.3点

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【“女性の壁”の先にある“非白人”の壁】

トイレも水飲み場も図書館も、白人用と非白人用に分けられていた時代、自らの手で新しい扉を開いていった黒人女性たちのトゥルーストーリー。

当時、世界最先端の科学技術を誇っていたNASAでさえこの有様だったのか、と愕然とします(巷のレイシズムは推して知るべしでしょう)。

劣悪な環境下で、自分の夢を実現するために奮闘した女性たち。その手段が、糾弾でも反抗でもなく、自らの能力とバイタリティというところが本当にあっぱれです。

【あらすじ】

1960年代初頭、ソ連と激しい宇宙開発競争を繰り広げていたアメリカ。その中核を担うNASAで働く優秀な黒人女性グループのひとり、天才的な数学者のキャサリンは宇宙特別研究本部に配属されるが、周りは白人男性だらけで、重要な仕事は任せてもらえない。管理職への昇進を願うドロシーやエンジニアを目指すメアリーも、理不尽な差別的待遇によってキャリアアップを阻まれていた。しかし、彼女たちは持ち前の能力とバイタリティで、“女性の壁”、“黒人の壁”を突き崩していく……。

【感想・レビュー】

キャサリンやドロシーたちへの共感度MAX、思わず拍手したくなる爽快な映画です。しかし、一方で、愚劣なレイシズムに対し強い憤りを覚える映画でもあります。白人以上の能力を持ちながら肌の色が違うというだけで、競争のスタートラインにすら立てない理不尽さ!……観ていて正直ムカつきます。

ヒラリー・クリントンがドナルド・トランプに敗北したとき、“ガラスの天井が……”とか言っていましたが、恵まれた白人女性のヒラリーがそれを言っても、“なんだかなあ”って感じです。“ガラスの天井”は、キャサリンやドロシーたちにこそ相応しい言葉。彼女たちには、“女性の壁”の先に更に高い“非白人の壁”があるのだから……。

救いは、彼女たちのしなやかさ。現実を現実として受け止めて、自らをブラッシュアップすることで少しずつ環境を変えていく、その柔軟性やバイタリティは本当にすばらしいと思います。そんな彼女たちを応援する夫や子どもたちの姿がまた微笑ましくて、ほっこり和みます。また、キャサリンの上司(宇宙特別研究本部長)アルも好印象です。職場で鬼上司と評されているアル、さぞかしパワハラの権化かと思いきや、仕事第一、実力本位というだけで、無骨だけれども真っ直ぐなハートを持ったナイスミドルです。キャサリンの訴えに耳を傾け、女子トイレの案内板をハンマーで叩き壊すシーンは気分爽快、スカッとします(若い人たちには理想の上司像ではないでしょうか)。

これは『ヘルプ』に並ぶ名作。実話ならではの説得力を持っだ、力のある映画だと思います。

……それにしても、愛を説くキリスト教を信じ、教会で神に祈りを捧げる一方で、レイシズムを恥とも思わない人たちの神経はどうにも理解できません。そういう輩がムスリムを批判したり、中国の人権問題をあげつらうなど、笑止千万、偽善の極みだと思うのですが……。