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🔴本「出版禁止」感想*ミステリーというよりサスペンスホラーに近いテイストの一作*長江俊和(新潮文庫)レビュー3.7点

出版禁止 (新潮文庫)

出版禁止 (新潮文庫)

【コテコテに凝った趣向のミステリー】

「裏切られた!!こんな経験二度としたくない!」という本仮屋ユイカ嬢の帯の触れ込みに惹かれて購入。

……で、ユイカ嬢の絶叫は分からないではないが、少し大袈裟なような気もする。

ミステリーというよりサスペンスホラーに近いテイストの一作。

【あらすじ】

作者、長江俊和は、偶然、フリーライター、若林呉成が記したいわくつきの遺稿を手に入れる。

タイトルは「カミュの刺客」。そこには、時代の寵児ともてはやされたドキュメンタリー作家と心中を図り、生き残った新藤七緒の独占インタビューの詳細が記されていた。

二人の心中は、純愛だったのか、それとも偽装殺人だったのか、若林の遺稿によって、衝撃の事実が明らかになっていく……。

【感想・レビュー】

かなり凝った趣向の異色作。物語が映画の「劇中劇」のように重層的な構造になっていて、仕掛けもふんだんに盛り込まれているので、一度読んだだけではなかなかストンと来ない。かと言って、あまり後味が良くないので、二度読みする気にもなれない、という困ったミステリー。

個人的には、途中まで本格推理の大どんでん返しを期待してワクワクしながら読んでいたのだが、若林の取材方針が「心中か偽装殺人か」から「心中に至る心理の追及」へと変わったあたりから、彼の心理の変調に付いていけなくなって、興味が薄れてしまった(論理の飛躍?というか、以降の若林の思考過程にはかなりの違和感を感じる……単に読解力不足なのかもしれないが)。

文中の様々な仕掛けも、なぞなぞとかコトバ遊びの域を出ていない……ような気がするのだが。その点を作者の遊び心と捉えてニンマリするか、あざとさを感じて不快になるかも、この作品を評価する上での一つの分かれ目だろう。

ストンと来ない部分は、著者の“あとがき”で一応真相らしきものが分かる仕組みにはなっているのだが、それでも何か割り切れない、モヤモヤ感は残る。作者からこれだけヒントをもらって、なおピンと来ないのは、脳の柔軟性が失われてきたせいか?