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🔴本「夜葬」感想*怖さより気色悪さが先に立つホラー*最東対地(角川ホラー文庫)レビュー3.5点

夜葬 (角川ホラー文庫)  

夜葬 (角川ホラー文庫)

【怖さより気色悪さが先に立つホラー】

“食わず嫌いはしない”のがポリシーなので、久々にホラーに挑戦。しかし……作品の出来、不出来以前に、ホラーはやっぱり合わないかも。

【あらすじ】

栃木県の山奥の閉ざされた寒村に伝わる因習。……その村では、死者が出ると、その顔をくり抜いて、地蔵にはめ込んで弔い、穴の空いた死者の顔に白米を盛り、親族で食べ合うという。そして、村人たちは、その死者を“どんぶりさん”と呼ぶ……。

ある青年が、偶然、雑誌に掲載されたその記事を目にしたとき、彼のスマホに突然文字化けしたメールが届き、ナビが起動する。その日、彼は顔をくり抜かれて殺害された。

やがて、同種の事件が続発していることに気付いたテレビ番組制作会社の坂口は、部下の袋田と朝倉に取材を指示する……。

【感想・レビュー】

この類の作品は、良し悪しがよく分からないので、以下は思い付いたままのコメント。

閉ざされた村の古めかしい因習と今風のスマホの奇妙な取り合わせ(ミスマッチ感)が斬新で、得体の知れない“何か”がじわじわと確実に迫ってくる感じをスマホを使って演出するアイデアも見事。

確かに、ナビが勝手に起動して『目的地が設定されました。目的地まで○キロです』とか『まもなく目的地です』とかいう案内が流れ……その目的地が自分の居場所だとしたら……その想像はかなり怖い。そのあたりの恐怖心の煽り方はなかなか大したものだと思う。

ただ、それ以外の部分ではグロさが先に立って、怖さはあまり感じない。“どんぶりさん”のキャラクターや“どんぶりさん”の殺しの手口も、グロくはあるが、何となく漫画チックで、笑うに笑えない微妙な気分だ。

もう一つの難点は、テンポはいいのだが、話の筋がよく見えないところ。様々な仕掛けの整合性がイマイチで、読後、何でこうなるの?といったモヤモヤ感が残る。たとえ恐怖の本質が理屈で説明できない“不条理性”にあるとしても、作りがやや雑な感じは否めない。

棺桶にくるぶしまで突っ込んでいる(片足まではまだいっていないと思う)、ほとんど怖いもんなしのジジイにとっては、もう一捻りほしい作品。