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🔵映画「千年医師物語〜ペルシアの彼方へ〜」感想*ドイツ人の真面目な気質が溢れた一作*(2013ドイツ)レビュー4.1点

千年医師物語 ~ペルシアの彼方へ~ [DVD]

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【医師を目指す青年の情熱とロマン】

中世ヨーロッパとペルシアを舞台に、医師を目指す青年の試練を描く壮大なアドベンチャーロマン。青年の若々しい情熱を真っ直ぐ、几帳面に描いているところが、いかにもドイツ映画らしい。

【あらすじ】 
カトリックが支配する11世紀のイングランド。幼い頃母親を中耳炎で亡くしたロブは、そのトラウマを探究心に変え、医師になることを目指す。

ロブは、当時世界最高と謳われたペルシアの医師イブン・シーナに憧れて、ドーバー海峡を渡りフランスからエジプトへと過酷な旅を続け、遂にペルシアへと辿り着く。

そこで念願のイブン・シーナへの弟子入りが叶ったロブは、貪欲に知識を吸収し、次第に師と国王の信頼を勝ち獲ていく。

しかし、更なる高みを目指すロブは、禁断の行為に手を染め、絶体絶命の窮地に陥ってしまう……。

【感想・レビュー】
155分の大作映画。序盤はややスローな展開だが、中盤以降は、過酷な旅あり、黒死病(ペスト)との戦いあり、禁断の恋あり、異民族との戦争ありと、アドベンチャーロマンと呼ぶに相応しいスペクタクルな展開を見せる。

しかしこの作品、華やかさとか痛快さといったハリウッド的テイストは薄く、どちらかと言えば重厚でシリアスな印象を受ける。それはこの作品が、一種の医療ドラマの一面を有しているからだろう。

医療で人の命を救いたいというロブの一途な想いと、医療の限界に諦念を抱きつつも、ロブへの支援を惜しまない師イブン・シーナの慈愛。ロブの情熱と二人の師弟愛がこの作品の核になっている。

彼らは、黒死病の猛威に圧倒され心が折れそうになりながらも、不眠不休で治療に当たる。また、獄中で死を待つ間も、人体の構造について熱心に語り合う。そんな彼らの姿に医師の原点を見る思いがして、救われる。

壮大なロケーションの魅力もさることながら、主役である“人間”が魅力を放つ映画(人間をきちんと丁寧に描いているところに生真面目なドイツ人気質が表れているような気がする)。特に(脇役では)ロブの幼い頃の育ての親の“理髪師”のキャラクターが印象的で、ラストの心地良さも、彼の再登場によるところが大きい。

ツッコミどころもない訳ではないが(ペルシア人がフツーに英語を話したり、一度解剖を経験しただけのロブが国王の中耳をうまく摘出したりなど)、このジャンルの映画では、許容範囲とすべきだろう。