🔵映画「飛べ、バージル プロジェクトX」感想*チンパンジーの名優振りとヘレン・ハントの知性的な美しさが見どころ*(1987アメリカ)レビュー3.9点
【人間より賢そうなチンパンジー】
核戦争のための実験に利用されるチンパンジーとそのチンパンジーを救出しようとする人間の友情を描く。いかにも人間的なチンパンジーと余りに非人間的な人間との対決、という構図が面白い。
チンパンジーの名優振りとヘレン・ハントの知性的な美しさも見どころ。
【あらすじ】
大学の研究所の女性研究員チリは、チンパンジーのバージルと手話でコミュケーションをとる研究を3年間続けていたが、ある日、研究は打ち切りとなり、バージルは動物園に引き取られることに。しかし、バージルを引き取ったのは、空軍基地内にある研究施設だった。
パイロットから飼育員に降格となったジミーは、バージルが手話を理解することに驚き、甲斐甲斐しく世話をして絆を深めていくが、飛行訓練を終了したチンパンジーたちが一匹も戻って来ないことに疑念を抱く。
やがてジミーは、施設内で、被爆したパイロットが何時間操縦できるかをチンパンジーを使って実験する極秘プロジェクトが進行していることを知る。
そして次の被験体としてバージルが選ばれたことを知ったジミーは、バージルを救うため、かつての飼い主チリと共に実験を阻止しようとするが……。
【感想・レビュー】
何よりチンパンジーの名演技にびっくり。よくもまあ、これだけ仕込んだものだと感心する(チンパンジーも凄いが、アニマル・トレーナーも凄い)。
バージルの喜怒哀楽の表情が人間並みにバリエーション豊かで、彼が一点を見つめて物思いに耽る姿など、思索する哲学者の趣すら漂って、「こいつ、オレより賢いかも?」と思わせるオーラがある(……最近物忘れがひどいので、あと10年もすれば確実に追い越されている気がする……)。バージルが、大好きなチリやジミーに甘えるシーンなども微笑ましくて癒される。
この映画、B級映画のイメージだが、なかなか良く出来ていて、侮れない。チンパンジーと人間の友情(というか親子愛に近い)を縦軸、軍の陰謀を横軸にして、スリリングに展開するサスペンスタッチのヒューマンドラマという感じか。
ついつい可愛すぎるバージルに感情移入してしまい、ラストは身勝手な人間たちに“ザマアみろ”の爽快感。少ししんみりするシーンもあって余韻もいい。ちょっとした拾いものの一作。
……しかし、途中でエンディングがミエミエになってしまう邦題の付け方は、余りにもお粗末でいただけない。