🔵映画「カルタヘナ 陽だまりの絆」感想*永遠のアイドル、ソフィー・マルソーの知性的な美が光る一作*(2009フランス)レビュー3.9点
【永遠のアイドル、ソフィー・マルソー】
13歳のとき「ラ・ブーム」で鮮烈デビューしたソフィー・マルソーも、はや50歳。普通なら時の無常を感じるところだが、この女優は、いつまでも美しい。
ジョディ・フォスターもそうだが、子役の頃から長く活躍している女優は、美しさだけでなく、内面から滲み出るような知性が感じられる(生き馬の目を抜く映画界で生き残るためには賢さも必要ということだろう)。
本作も、ソフィーの知性的な美が光る一作。
【あらすじ】
物語の舞台は、南米コロンビアの観光地、カルタヘナ。半年前フランスから故郷に戻って来た元ボクサーのレオは、交通事故で首から下の自由を失った、高慢で気難しい女ミュリエルに介護人として雇われる。
彼女の介護は、食事から排泄の世話までという過酷なものだったが、自分の人生に絶望し、酒浸りの日々を送るレオにとっては、唯一の生活手段だった。
そんなだらしないレオと気難しいミュリエルは、度々衝突を繰り返す。
しかし、二人はそれぞれの孤独や絶望に触れて次第に心を通わせるようになり、やがて、互いにかけがえのない存在となっていく……。
【感想・レビュー】
万人向けとは言えないが、悪くない映画。ただ、サブタイトルの「陽だまりの絆」はヒドい。余りにもありきたりで安っぽい。
……さて、この映画、シチュエーションは「最強のふたり/2011フランス」とよく似ているが、中身は全く別物。「最強のふたり」は前向きに“生”を捉えた作品だが、本作は何となく“死”の匂いが漂う作品と言え、イメージとしては、太陽と月ほどの違いがある。
それでも個人的な好みは、本作の方。ややもすると陰陰滅滅とした雰囲気に流れそうなところを、南米の明るい陽光とフランス映画特有の軽やかさが救っている。劇中のアルチュール・ランボーらの詩(『太陽と肉体』、懐かしい!)も、この映画に芸術的な彩りを添えて、フレンチテイストを醸し出している。
それにしても、主演の二人は実生活もパートナーだけあって、息がぴったり。抑制の利いた演技も見事なもので、特に、ミュリエルが、気丈な態度と裏腹に微妙な女心を覗かせるいくつかのシーンは印象的。
全身の自由を失った女とアル中の元ボクサー……孤独と絶望を抱えた二人は次第に距離を縮めていくが、最後まで愛の言葉は交わさない。二人のその慎み深い態度がいい。その態度に、人生への諦観や言葉にできないほどの深い想いが全て込められているような気がして、いかにも大人(の恋)という感じがする。
因みに、エンディングは評価が分かれるかもしれない。モヤモヤ感を感じるか、余韻を感じるかは、観る者の感性次第というところだろう。