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🔴本「屋上のテロリスト」感想*怒濤のノンストップ・エンタメ小説!*知念実希人(光文社文庫)レビュー4.2点

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

【怒濤のノンストップ・エンタメ小説】

戦後、二つの国に分割された日本で着々と進行する壮大なテロ計画。その首謀者は可憐な女子高生⁉

『セーラー服は女子高生の戦闘服』と宣うヒロインがカッコいい!

【あらすじ】

ポツダム宣言を受諾せず、徹底抗戦を続けた日本は、広島、長崎に次いで新潟に原爆を投下され、九州を連合軍に、北海道をソ連に占領された末、1945年11月、ようやく終戦を迎えるが、米ソによって東西二つの国家に分割されてしまう。

それから70数年。西日本共和国の大統領と東日本連邦皇国の書記長は、密かに東西日本の統一を模索する。一方、その動きを察知した東日本連邦皇国の陸軍は、クーデター計画を実行に移し始める。

ちょうどその頃、学校の屋上から飛び降りようとした高校生の彰人は、謎めいた同級生の沙希から自殺を止められ、奇妙なアルバイトを持ちかけられる。

沙希の誘いに乗った彰人は、知らぬ間に彼女が仕組んだ壮大なテロ計画の渦中に巻き込まれていく……。

【感想・レビュー】

スケール感のあるノンストップ・エンタメ小説。“もし”日本がポツダム宣言を受諾していなかったら……という仮定が見事。もし、日本が戦争を継続していたとすると、確かに、米ソのパワーバランスの下に、分断国家となっていた可能性は十分考えられる。

特に最近、朝鮮半島情勢が緊迫の度を増しているだけに、この小説は絵空事とは思えないリアリティがあって、今更ながら8月15日の終戦に安堵の思いがする(終戦の際の政府と軍部の暗闘を描いた「日本のいちばん長い日/半藤一利」を読むと、尚更その思いを強くする)。

その仮定の見事さに加え、『ノンストップで進行する美少女のテロ計画』という着想が素晴らしい(これこそフィクションの醍醐味。知念実希人のイマジネーション、恐るべし!)。

一体沙希は何者か、彰人の使命は何なのか、彼女は何を企んでいるのか……巧妙に張り巡らされた伏線が一気に回収され、膨れ上がった疑問が氷解する驚愕のラストは、“鮮やか”の一言。読後の爽快感も申し分なし。

この小説、スケールの大きさに加えて、視覚的な描写も多く含まれているので、映画化されたらさぞ面白いものが出来上がるに違いない。ただし、幼さと妖艶さを併せ持つミステリアスな美少女沙希の適役がいれば、の話だが……。