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🔴本「湯を沸かすほどの熱い愛」/中野量太(文春文庫)*「君の名は」よりも優れていると思うノベライズ作品*レビュー4.0点

湯を沸かすほどの熱い愛 (文春文庫 な 74-1)

湯を沸かすほどの熱い愛 (文春文庫 な 74-1)

2016年10月公開の同名映画(中野量太監督、宮沢りえ主演)のノベライズ作品。同じようにノベライズされた「君の名は。」も読んでみたが、小説としての出来は本作の方が優れていると思う。

【あらすじ】

夫の家出で家業の銭湯の休業を余儀なくされた幸野双葉は、パン屋のパートをしながら高校生の娘と暮らしている。そんな双葉に突然余命二ヶ月の宣告が下される。生きているうちに「絶対やっておくべきこと」を実行しようと決意した双葉は、まず夫を連れ戻して銭湯を再開し、娘の独り立ちを支援する。一応の平穏が訪れた幸野家だったが、双葉のやるべきことはまだまだ残されていた……。

【感想・レビュー】

いかにも映画のノベライズらしく、シンプルで飾り気のない、ストーリー勝負の小説だが、そのストーリーがよく練られているので、一読の価値はある作品。

いわゆる余命モノ、難病モノの小説や映画はさすがにこのトシになると身につまされてツラいのだが、この作品は(映画「きっと、星のせいじゃない」と同じように)、主人公のポジティブな生き方にスポットを当てているので、それほど深刻にならずに筋を追うことができる。しかし……夫と愛人との子?鮎子が、母親と双葉に寄せる想いを語る場面で、とうとう涙腺崩壊。こんないたいけな女の子を使うなんて反則だろ!(やっぱり小学校低学年モノにはトコトン弱い)……そして、作者の趣味、嗜好が最もよく表れた意外なラスト。この趣向に共鳴するかどうかは読者次第というところだろう。

鮎子の母親の行方や双葉の母親のその後に触れていない点に多少のモヤモヤ感は残るが、素敵な作品には違いない。

久々に母の無償の愛と家族の絆に触れて、家族への想いが募る、感慨深い一冊。