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🔴本「最後の医者は桜を見上げて君を想う」/二宮敦人(TO文庫)*若者にも年寄りにも一押しの作品*レビュー4.4点

 

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

書店員のPOPに惹かれて購入。読んでみたら、これが久々の夜更かし本。書かずにはいられないという作者の熱い想いがズシンと胸に響く渾身の力作。 

【あらすじ】

地域の基幹病院の副院長福原と勤務医の桐子と音山。3人は医大以来の盟友だが、福原と桐子は、医療に対する根本的な考え方の違いから、決定的に対立してしまう。その有様に心を痛めた音山は、何かと2人の関係修復を試みるが、余命幾ばくもない患者に対し、奇跡を信じ、最後まで生を諦めない福山と、死を受容し、残された生を人間らしく生きるべきと説く桐子のどちらの考えにも違和感を感じ、自身の医師としての立ち位置に悩んでしまう。やがて、そんな3人にあまりにも厳しい試練が襲いかかる。究極の選択を迫られた医師たちは、何を想い、どう行動するのか……。

【感想・レビュー】

本作は、2人の医師の対立と和解の姿を通して、医療や医師の在り方、生と死の意味を問う迫真の医療ドラマ。この作品が凄いのは、死に虚飾も美化も加えていないところ。そこに作者の本気を見る。実際、死に直面した患者に突きつけられる選択のあまりの重さに時々頁を捲る指が止まりそうになるが、苦悩しながらも最後まで戦い抜いた患者と医師の姿や、死を受容した患者の想いに一筋の光(人間の尊厳)も見えて、救われる。死は誰もが向き合いたくないテーマだが、死を考えることは生を考えることに他ならない。限りある生をどう生きるか、たまにはそんなことを真剣に考えてみるのも大事なことだろう。本作はきっとそのきっかけになるに違いない。

未来のある若者にも、未来はなくても明日はある年寄りにも、是非読んでもらいたい一冊。