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金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔴本「戸村飯店 青春100連発」/瀬尾まいこ(文春文庫)は、女性ウケするほっこり青春小説 レビュー3.6点

戸村飯店 青春100連発 (文春文庫)

戸村飯店 青春100連発 (文春文庫)

若い女性に本を薦めて一番ハズレがないのが瀬尾まいこ。「卵の緒」「天国はまだ遠く」なんかはほぼ鉄板。構えないで気楽に読めるところや読後のほっこり感が人気の理由なのだろう(しかし「温室デイズ」はちょっとしんどかった)。というわけで、久々にウケ狙いの一冊。

【ストーリー】

大阪の大衆中華料理店、戸村飯店のあまり反りの合わない二人息子。性格も違えば能力も違う。波長が合わずにいつも互いを煙たく感じている。でも話し合うには照れくさい……(年頃の男の兄弟なんてそんなもの。さすが瀬尾さんよく分かってらっしゃる)。そんな二人の成長をボケとツッコミを交えたユーモラスな文体で伸び伸びと描いた青春小説。

【あらすじ】

家庭や周囲の環境に馴染めず、高校卒業を機に東京へ飛び出した兄、父母の気持ちを慮って家業を継ぐ決心をした弟。二人はそれぞれに自分の正直な気持ちに向き合い、回り道をしながらも自分の進むべき道を切り開いていく……。

【感想・レビュー】

本作もフワフワと柔らかく、ホカホカと温かい瀬尾さんらしい作品。兄を温かく見守る東京人のスマートな人情と弟を熱烈に応援する大阪下町のオッチャン、オバハンの暑苦しい人情の対比も一つの比較文化論みたいで面白い。ただ、この作品、少々あっさりしすぎて、物足りない気がしないでもない。もう少し二人の悩みを掘り下げてほしかった。

……せっかくなので、若い頃の回り道について一言。

「若さとは時間とエネルギーの壮大な無駄遣いである」あるいは「青春は無意味な行為にこそ意味がある」(byお気楽年金生活者)

だから回り道も悪くない。若い頃の無駄が後々の人生を豊かにしたり、新しい文化を生み出すことも往々にしてあることだから。それにだいいち、無駄のない人間なんて愛嬌がないし、そんな人生なんてロクなもんじゃない。