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金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔴本「不動カリンは一切動ぜす」/森田季節(ハヤカワ文庫)タイトルセンスはいいが、年寄りには不向きな本だった。レビュー3.4点 

不動カリンは一切動ぜず (ハヤカワ文庫JA)

不動カリンは一切動ぜず (ハヤカワ文庫JA)

タイトルのセンスに惹かれて購入。

第一部は「不動カリンは一切動けず」、第二部は「不動カリン、動く」、第三部は「不動カリンは一切動ぜず」。これもナイスセンス。

【感想・レビュー】

で、中身はというと、……うーん、なんじゃコレ、という感じ。どう解釈していいか分からないのではなく、どう評価していいのかが分からない。

要約すると「全ての子どもたちが人工授精で誕生し、人々がテレパシーで交信し合う近未来の神戸市を舞台に、国家や大人たちの不条理に敢然と立ち向かう少女たちの愛と勇気の物語」なのだが、真剣に読んでいると突然、得体の知れない神様は出てくるわ、池から竜は出てくるわ、大丸デパートの北海道物産展は出てくるわで、硬い頭ははてなマークだらけ。ファンタジーってこんなもんかとナメてかかると、今度は、鋭すぎる指摘にガツンとやられるという、意表突かれまくりの物語なのだ。

どこからなにが飛び出してくるか分からない、具材なんでもアリの闇鍋的小説だが、単に年寄りに不向きというだけで、青少年には「まじうける」世界観なのかもしれない。

作者の名誉のために付言すると、小さなエピソードを積み上げて壮大な物語に仕立て上げる構想力は素晴らしく、平易で明晰な文体にもその知性の高さが窺える。