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🔵映画「世界にひとつの金メダル」感想*人馬一体の成長物語*(2013フランス・カナダ)レビュー3.9点

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【人馬一体の成長物語】

いい映画なんですが、邦題がひどい。テキトー感、ありまくりです。原題は“ジャップルー”、馬の名前です。こちらの方が誰が主役かが分かって、ずっとよろしいかと。

……という訳で、この作品は、ソウルオリンピック馬術競技(障害飛越競技)の金メダリスト、ピエール・デュランと競走馬ジャップルーの成長物語です。

馬ってホントにカッコいいですね。光沢のある肌、力強い体躯、優美なライン、そして何と言っても走る姿の美しさ。非の打ち所がありません。地上の造形物で最も美しいのは、ミロのヴィーナスと馬の姿形なんじゃないか、と思ったりもします。

【あらすじ】

舞台は、1980年代のフランス。幼い頃から障害飛越競技に打ち込んできたピエールは、馬術スクールのオーナーである父親の手厚い庇護の下、着実に選手(ライダー)としてのキャリアを積んでいきますが、大人になって、競技の重圧や父親との葛藤などから競技から離れ、都会で弁護士の道を歩み始めます。

そんなピエールを競技の世界へ引き戻したのは、小柄で気性の荒い競走馬、ジャップルーでした。彼は、ジャップルーの並外れた跳躍力に惚れ込み、弁護士のキャリアと安定した生活を捨て、ジャップルーとともに、ロスオリンピックを目指します。

しかし、ロスオリンピックで手痛い敗北を喫したピエールは、その後、国の強化選手の資格剥奪、馬術スクールの経営難、父親の急逝など、相次ぐ不幸に見舞われ、競技への情熱を急速に失っていきます。

そんな苦境の中、ピエールに待望の子どもが誕生します。妻と子に励まされ、再び強化選手に指名されたピエールは、これまで自分とジャップルーに関わってきた人たちの想いを噛みしめながら、ソウルオリンピックの馬術競技場に立ちます……。

【感想・レビュー】 

この作品は、障害飛越競技に魅せられたフランス人青年が、家族や愛馬とともに様々な困難を乗り越えながら、アスリートとして、また一人の人間として成長していく姿を描いたトゥルーストーリーです。

この作品、ピエールを単なるヒーローとして描くのではなく、彼の人間的な弱さ(けっこうウジウジしてます)を含めて、一人の生身の人間として描いているところに好感が持てます。また、ピエールを静かに見守り、言葉少なに応援し続ける朴訥な父親と、落ち込んだピエールを時に厳しく叱咤激励する気丈な彼の妻も素敵です。それに、フランスの男女の会話がとてもお洒落です。張りつめた空気が漂う場面で、エスプリの効いた恋人たちの会話や夫婦喧嘩のシーンが入ると、ちょっと和みます。

しかし、この作品の最大の見どころは、何と言ってもソウルオリンピックでのジャップルーの華麗なジャンプでしょう。カメラは、疾走し、跳躍するジャンプルーを正面、横、下などあらゆる角度から捉えてその力感をダイレクトに伝えるだけでなく、競技そのものの迫力や競技場の興奮までもダイナミックに映し出しています。勝利を確信したピエールが最後の障害をクリアする瞬間、馬上で両手を高く突き上げるシーンは、ほとんど鳥肌ものです。

……それにしても、障害飛越競技って、難しいスポーツだったんですね。今まで“地味で気取った競技”とか“金持ちの道楽”といったイメージしか持ってなかったんですが、ナメてました。そもそも危険な上に、コースの特徴や攻め方、馬の状態の見極めなどに相当の経験とハイレベルのセンスが求められる、奥の深いスポーツだと分かって、いい勉強になりました。これを機に、東京オリンピックでは、この競技にしっかり注目したいと思います(……それまで生き延びていればの話ですが)。