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🔵映画「パンズ・ラビリンス」*竹中直人が激賞していた映画らしい映画*(2006メキシコ,スペイン,アメリカ)レビュー4.1点

パンズ・ラビリンス [Blu-ray]

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この世界観は映像でしか表現できないだろう。その意味ではいかにも映画らしい映画。内容が想像以上にダークなので、受けつけない人もいるかもしれないが、映画としての完成度は高く、個人的には好みの映画。竹中直人が激賞していたが、何となく分かる気がする。

【あらすじ】

物語の背景は、スペイン内戦の影響が尾を引く1944年のフランコ独裁政権下のスペイン。政府軍と反乱軍の戦闘が続く暗黒時代に生を受けた少女オフィリアは、内戦で父を亡くし、身重の母とともに、母の再婚相手の政府軍の大尉と山奥の要塞で暮らし始めるが、現実はつらく悲しいことばかり。そんなとき、オフィリアは、妖精の化身である虫たちに導かれて、暗い森の中にある迷宮の王国の入口に立つ。彼女を見た王国の番人パンは、彼女を王女の生まれ変わりだと言い、王国に戻るための3つの試練を与えるのだが……。

【感想・レビュー】

物語は、政府軍と反乱軍の熾烈な戦闘が続く現実世界と、オフィリアが創り出した?妖精や魔物たちが棲む幻想世界が交錯しながら、不気味に展開していく。この映画の最大の魅力は、そのストーリー性の豊かさと圧巻の映像美だろう。一見、空想好きの少女の現実逃避の物語のように見えながら、そう単純な話でもない。現実世界に残った幻想世界の痕跡や大尉の時計の秘密などの凝った趣向が観る者のイマジネーションを喚起して、興趣が尽きないし、現実と幻想の間を生きつ戻りつする展開も、何ら違和感を感じない。そのあたりは本当によく出来ていると思う。また、物語のダークな世界観を貫く映像美も圧巻で、グロテスクとしか言いようのない妖精や魔物でさえ、ある種の神秘性を帯びて見えてくるから不思議だ(ただ、大蛙は気持ち悪かった……)。

俳優の中では、無慈悲で残忍な大尉を演じたセルジ・ロペスの印象が強烈。戦争はこんな化け物を産み落とすのか、と震撼させる迫真の演技で、その存在感はこのファンタジーにより一層ダークなリアリティを与えている。

ラストの結末に希望を見るか落胆するかは人それぞれだろう。この映画は一言で言えば、大人のための残酷な童話。アンデルセンの「マッチ売りの少女」のような詩的な美しさのある寓話と言ったら言い過ぎだろうか。