🔵映画「幸せになるためのイタリア語講座」＊登場人物の魅力で成功した作品＊（2000デンマーク）4.3点

ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したデンマーク映画。

こういう地味な小品が賞を獲るのは他人事ながら嬉しい限り。この映画と共に、審査員にも盛大な拍手を贈りたい。

【あらすじ】

妻を亡くしたばかりの新米牧師、人の善さだけが取り柄のホテルのフロントマン、すぐキレるプロサッカー選手崩れの男、いつもドジばかりのパン屋の女店員、アル中の母親の看病に疲れ切った女美容師、好きな男にいつまでも告白できないイタリア女……。本作は、仕事や家庭、恋愛に悩みを抱えた６人の男女が、イタリア語講座での出会いをきっかけに、少しずつ臆病な自分を変えていく様を描いたハートウォーミングドラマ。

【感想・レビュー】

登場人物の魅力で成功した作品。みんな揃いも揃って不器用な人間ばかりで、ホテルのフロントマンなどはその典型。上司から命令された同僚のクビ切りはいつまでたっても実行できないし、好きな女性をデートに誘うことさえできない。他の５人も似たりよったりで、それぞれ思うようにいかない人生に自信を失い、挫けそうになりながら、それでも目の前の現実を懸命に生きている。そんな等身大の彼らが余りにもいじらしくて、つい心の中で、「負けるな！」、「もうひと押し！」などと叫んでしまうのだ。それだけに、この映画のクライマックス（憧れのベニスへのグループ旅行）で彼らが見せる精一杯の勇気は、たまらなく可愛らしく、愛おしい。ほんの少しの勇気で未来は変えられる……とても素敵なメッセージだ。

この映画は人を幸せにしてくれる。世界中の心優しき人々に想いを巡らし、日頃馴染みのないデンマーク人にシンパシーを感じて、気持ちがほっこりする映画。