🔵映画「カメレオンマン」*評価の高いウディ・アレンの初期代表作にガッカリ・・・*(1983アメリカ)レビュー3.9点
作家性(メッセージ性)の強い監督が商業主義のアメリカ映画界で成功するのはかなり難しいようだが、ウディ・アレンはその例外。多作であるにもかかわらず失敗作はほとんどなく、評価は常に安定している。本作は映画通の間ではかなり評価の高い、彼の初期を代表する作品。
【あらすじ】
あるときはマフィアの幹部、あるときは謎の中国人、またあるときは黒人のジャズメン……不遇な家庭環境で育ったユダヤ人青年ゼリグは、誰にでも愛されたい、受け入れられたいという同調願望が高じて、周囲の何者にも変身できる能力を備えてしまう。世間はそんな彼を「人間カメレオン」と呼んでもて囃すが、やがてその特殊な能力が招いた災難によって、今度は世間の袋叩きに遭い、とうとう彼は行方をくらましてしまう……。
【感想・レビュー】
ゼリグが巻き起こす奇妙キテレツなドタバタ劇を、当時の著名人の回想形式で、さももっともらしく?描いた(偽)ドキュメンタリー・コメディ。
都会的で、軽妙洒脱、知的でクールな印象のアレンだが、この作品は異色。観客のド肝を抜く趣向で、徹底的に遊んでいる。そこが玄人筋にウケるのだろう。実際、KKK団、ベーブ・ルース、フィッツジェラルド、ローマ法王、果てはヒトラーまで、出でくるわ、出でくるわで、もうハチャメメチャ!なのだが、ユダヤ人のアイデンティティへの自嘲や知識人、大衆へのアイロニーなど、メッセージ性にも手抜かりはない。
アレンの斬新な企みが見事に奏功した映画で、玄人筋が唸るのも十分理解できる。実際、オリジナリティに溢れた完成度の高い作品とは思うのだが……個人的には、やっぱりアレンは、合わない。どんなにハメを外したところで、観ている間中、彼のどこか斜に構えたインテリ臭さが鼻について、素直に愉しめないのだ。
とはいえ、この傑作を貶めるつもりは毛頭ない。たぶん凡人のひがみだろうから。