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🔵映画「ふたりのベロニカ」*観る人によって解釈がガラリと変わる総合芸術作品*(1992フランス,ポーランド)レビュー4.4点

ふたりのベロニカ Blu-rau [Blu-ray]

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「愛に関する短いフィルム」は、キェシロフスキ監督の映像作家としての才能が如何なく発揮された、稀有の名作だと思う(個人的には、この作品と「エル・スール」(ビクトル・エリセ監督)は、棺桶に入れてあの世に持っていきたいくらい思い入れのある映画)。そのキェシロフスキ監督に惚れ込んで躊躇なく購入したのが、「ふたりのベロニカ」。本作は、違う国で暮らす何もかも瓜二つの二人のベロニカの数奇な運命を辿る、厳かで静謐な物語。

【あらすじ】

ポーランドとフランスで同じ日に生まれたふたりの女の子。ふたりは同じ名前、容姿、才能を持ち、似たような病気を抱えている。違う国で暮らす見知らぬ二人だが、なぜか互いの存在を感じるときがあり、やがて二人は思わぬ形で出会いを果たすのだが……。

【感想・レビュー】

ストーリー自体は難解ではないが、観る人によって様々な解釈ができる、奥の深い映画。特にエンディングについては、意見が分かれるところだろう。……それはそれとして、本作の魅力はなんといっても、ベロニカを演じたイレーヌ・ジャコブの美しい佇まいと光と音を巧みに使った映像美。天から降ってくるようなベロニカの歌声、何かを暗示するかのような無言の人形劇、窓に差し込む陽射しや街を渡る風の音の柔らかな質感……キェシロフスキ監督は、そうした匠の技を駆使して、この作品に一層の神秘と幻想を与えている。

この作品もまた、映画が総合芸術であることを示した名作。