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🔴本「トッカン 特別国税徴収官」感想*一生懸命生きる人間の姿に心揺さぶられる傑作*高殿円(ハヤカワ文庫)レビュー4.3点

トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫JA)

トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫JA)

確定申告の時期が近くなったので、「税」について真面目に考えてみたいと思って手にした本。というのはウソで、名古屋大学文芸サークルのオススメ本ということで購入(イマドキの学生さんがどんな本を読んでいるのかは興味がある)。

しかし、これは大当り。思わずビンゴ〜!って感じです。

【ストーリー】

公務員の中でもダントツの嫌われ者、国税徴収官。彼らは我が国最強の法律「国税徴収法」を武器にして、強きをくじき、弱きもくじく。それ故、金持ちからも貧乏人からも等しく嫌われる。しかし、税なくして国はなし。国が成り立たないと、貧乏人も救えない。本作はそんな因果な仕事に就いた悩み多きヒロインぐー子の涙ぐましい奮闘とその成長を描いたお仕事系エンタメ小説。

【感想・レビュー】

新米国税徴収官ぐー子は、税金滞納者から死神のように怖れられる鬼上司の特別国税徴収官(略してトッカン)の厳しい指導の下、悪質な滞納者やドン底の滞納者の取リ立てに日々悪戦苦闘しながら、少しずつ税金のことや仕事の意味を学び成長していくというストーリーで、トッカンと悪質な滞納者との虚々実々の駆け引きや騙し合いなどがリアルで、読み応えは十分。

しかし、それ以上に惹きつけられるのが、自分の仕事の意味や存在価値が分からずに悩みもがくぐー子の姿。その姿はときに無様で情けなく滑稽ですらあるが、自分の未熟さに真剣に向き合うぐー子の一途さやひたむきさには強く心動かされるものがある。ぐー子のような「生きることに不器用な人間」を現実にたくさん見てきたが、みんなそれぞれに魅力的な人たちだった…。

 お仕事小説には「舟を編む/三浦しをん」「ハケンアニメ!/辻村深月」「羊と鋼の森/宮下奈都」など多くの傑作があるが、深く考えさせられるという意味では、本作はそれら以上に傑作かもしれない。

熱く語る齢ではないけれど、この本は間違いなし!世のすべての仕事人に胸を張ってオススメできる良書です。