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🔵映画「黄金の馬車」*巨匠ジャン・ルノアールの芸術的精神が宿った大らかな人間喜劇*(1952フランス,イタリア)レビュー4.2点

黄金の馬車 デラックス版 [DVD]

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 印象派を代表する画家ピエール・オーギュスト・ルノアールの息子ジャン・ルノアール監督作品。同監督の作品は「大いなる幻影」、「草の上の昼食」、「ゲームの規則」に次いで4作目の鑑賞。個人的な好みは「大いなる幻影」。これは戦争(反戦)映画の金字塔とも言える一大傑作だと思う。

【あらすじ】

本作の背景は、18世紀のスペイン統治下のペルー。総督の屋敷の前に止められた黄金の馬車に、貴族や市民たちが群がり騒いでいる。そこに一攫千金を夢見てイタリアから渡ってきたイタリア仮面劇の一座が到着する。やがて一座は公演を始め、次第に観客の心を魅了していく。その中には黄金の馬車を所有する総督や絶大な人気を博する闘牛士もいて、一座の花形女優カミーラを巡る恋のさや当てと黄金の馬車の争奪戦が同時進行で繰り広げられる。果たして、カミーラと黄金の馬車を射止める者は誰なのか……。

【感想・レビュー】

豪華な舞台劇を観ているような映画。セットのすべてがきらびやかで、貴族たちの衣装や黄金の馬車の細工などは出色の出来。この美意識はやはり血のなせる技なのか。一巻の極彩色の絵巻物を見ているような気分にさせられる。ストーリーやセリフも、妙味があって面白く、ラストの大団円も心地好い。人間の喜びや哀しみ、恋や芸術を語り尽くした103分と言えるだろう(濃密な中にも大らかさが感じられるところが、いかにもルノアールらしい)。また、舞台と現実の交錯、音楽(ヴィヴァルディ、コレッリなど)と映像のシンクロなど、計算し尽くされた映画設計の妙にもほとほと感心してしまう。

……それにしても、カミーラを演じたアンナ・マニャーニという女優の迫力はハンパない。美人でもなく、好みでもないのだが、凄みを感じる女優ではある。たぶん、そういう凄みがオーラを醸し出して、女優ならではの存在感というものを生み出しているのだろう(その点が女優とタレントとの決定的な違いのような気がする)。

巨匠ジャン・ルノアールの芸術的精神が宿った大らかな人間喜劇。