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🔵映画「山猫」*映画本来の豊かさと陶酔感が味わえる一作*(1963イタリア, フランス)レビュー4.2点

山猫 [DVD]

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「ヴィスコンティを観ずして映画を語るなかれ!」と亡き淀川センセイは言った。……で、センセイに敬意を表して、一応、襟を正して鑑賞……のつもりが、186分の長さに根負けして、途中から寝そべってしまった。どうやらヴィスコンティは体力もケタ外れと見える。

【ストーリー】

本作は、19世紀後半のイタリア統一戦争に揺れるシチリアを舞台に、長年その地を統治してきたイタリア貴族の栄華と衰退、新旧の世代交代の有様を壮大なスケールで描いた一大叙事詩。

【感想・レビュー】

確かに世評のとおり、ヴィスコンティはたいした芸術家だと思う。最も称賛すべきはその美意識。とにかく荘厳華麗というか絢爛豪華というか、息を呑むような映像美に終始圧倒されっ放し。特に目を引くのは、イタリア貴族の豪奢な生活を彷彿とさせる広大な邸宅と重厚な家具、調度品の数々。壁画、彫像、絵画から、燭台、食器に至るまでヴィスコンティの徹底したこだわりぶりが感じられ、そういうところにも、彼の類稀れな審美眼や一切妥協を許さない確固たる精神性がよく表れている。さすがイタリア貴族の末裔と言うべきか(彼はミラノの名門貴族の生まれ)。

そして、圧巻は何と言っても、終盤の舞踏会。その壮麗な眺めはまさに映像美の極み。

主演はバート・ランカスター。彼のいかつい顔立ちはヴィスコンティの映画に本当によく似合っている。アラン・ドロンとクラウディア・カルディナーレも、映画の豪華さに負けない存在感を示している(……しかし、こんなこだわりの強い監督に付き合うのはさぞ大変だったろう)。 

耽美と退廃の世界を描いて他の追随を許さない巨匠ヴィスコンティ。その壮麗で厳格な作風は、何となくドイツ文学(特にトーマス・マン)の風格を思わせる。彼が「ベニスに死す」を撮ったのもその親和性からのような気がするが……考えすぎだろうか。

付き合うのに多少根気と体力を要する作品だが、その犠牲に見合うだけの映画本来の豊かさと陶酔感が味わえる一作。