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🔴本「アリバイ・アイク R・ラードナー傑作選」(新潮文庫)*ラードナーの炸裂するユーモアに終始頬が緩みっ放しの一冊*レビュー4.3点

アリバイ・アイク: ラードナー傑作選 (新潮文庫)

アリバイ・アイク: ラードナー傑作選 (新潮文庫)

アメリカの短編小説の名手リング・ラードナーの13の短編を収録した作品集。

【内容】

褒められても腐されても言い訳しか言わない野球選手、血も涙もない成り上がりのボクサー、患者の容態などお構いなしに喋りまくる看護師、度を越えた悪戯に人生を賭ける中年男、俗物の金満亭主に愛想を尽かした美人妻……そんなちょっとはた迷惑な人々を、独特のユーモアで、ときに愛情深く、ときに風刺的に描いた名短編集。

【感想・レビュー】

名コラムニストとして鳴らした経験からか、それとも訳者(加島祥造)の腕がいいのかよく分からないが、どの短編も、かなり饒舌でありながら、意外と平易で読みやすい。語りにキレがありオチも鮮やかで、まるで落語の真打ちの滑稽噺を聞いているような雰囲気がある。

実際、この作品集に登場する人物は、皆、揃いも揃ってどこか致命的にズレていて、困った人たちなのだが、それを呆れて眺めつつも、笑いに変えてしまう語り手たちのユーモア精神が何とも愉快で、そのおおらかな態度がこの作品集の後味の良さに繋がっている(ユーモアの質こそ違え、どこか江戸長屋の滑稽噺に通じるものがある)。

ガードナーが活躍した戦前のアメリカにはたぶんこんな寛容の精神が息づいていたのだろう。今のアメリカや日本の不寛容の風潮を見ると隔世の感があるが……。

なにはともあれ……この本は、文学というより出来の良い小咄の趣があって、ただ単純に面白い。ラードナーの炸裂するユーモアに終始頬が緩みっ放しの一冊。