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🔵映画「大人は判ってくれない」*若き天才フランソワ・トリフォー監督が描く少年の屈折した心情*(1959,フランス)レビュー4.2点

大人は判ってくれない/あこがれ Blu-ray

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フランソワ・トリュフォー監督は、子どもを撮るのが本当に上手い。「思春期」はその真骨頂を示す作品だと思う。

本作は、彼の不遇な少年時代を下敷きに、愛に飢えた少年の悲しみや孤独、自由への渇望を繊細なタッチで描いた傑作で、ヌーヴェル・ヴァーグの先駆けともなった作品。

【あらすじ】

12歳の少年、アントワーヌ・ドワネルは、父母の愛を知らずに育ち、教師たちからは問題児扱いされ、いつも悪友とつるんでいる。家庭にも学校にも居場所のないドワネルは、万引きや家出を繰り返し、遂にタイプライターを盗んだ罪で補導され、少年鑑別所へ送られる。ある日、ドワネルは鑑別所を脱走し、家族で行くはずだった海を目指す……。

【感想・レビュー】

いつも身勝手な父と母。生徒を小馬鹿にすることでしか威厳を保てない教師たち。そんな理不尽な大人たちへの反発と、拒まれながらもひたすら母の愛を追い求める幼児的な渇望との狭間で揺れる少年の心……思春期の扉の前に立った少年の屈折した心情を驚くほどのみずみずしさで描き切った若き天才、トリュフォー。その感性の燦きに感嘆する。

そして、圧巻のラスト。鑑別所を脱走し、浜辺に立った少年の表情をカメラが捉える。なぜか少年の眼差しは決意に満ちている。その表情からそれまでの幼さは消え、もう青年の顔になっている。……少年は一体何を決意したのだろう。

トリュフォーは、(親の愛は得られなかったようだが)映画の神に誰よりも愛された人だったと思う。