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金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔵映画「楽日」は、ノスタルジーと映画愛に溢れたツァイ・ミンリャン監督の秀作(2003台湾)レビュー3.9点

ツァイ・ミンリャン監督作品  楽日 [DVD]

ツァイ・ミンリャン監督作品 楽日 [DVD]

実在の古い映画館を舞台に、閉館間際に繰り広げられる人間模様が描かれた人間ドラマ。

【内容】

わずか82分の映画だが、セリフが極端に少なく(セリフはわずか数回だけ)、音楽も流れず(エンドロールの60年代歌謡のみ。でも作曲が服部良一なのが渋い)、やたらと長回しのシーンが続く(ラスト近くのからっぽの映画館の不動のショットはなんと5分間も続く)ので、途中さすがにイライラしてくるが、我慢して最後まで付き合うと、この作品のテーマやタイトルの意味が分かるという仕掛けになっている。

【感想・レビュー】

舞台は台北の場末の古ぼけた映画館。スクリーンには、かつて大ヒットした「龍門客桟」という活劇が上映されている。

本作の登場人物は、足の不自由な清掃員の女、映画館を徘徊する謎の男(どうも男漁りをしているようだ)、若い映写技師、そしてスクリーンに魅入るまばらな観客たち。その観客の中には、上映中の「龍門客桟」の主演俳優だった男たちもいる。

やがて映画は終わり、映画館の前に貼られた「臨時閉館」の文字が映し出される……。

なるほど。「楽日」とは「らくび」と読んで大相撲でいう「千秋楽」のことだったのか。そう考えると、映画館から家路につく人々の万感の想いがひしひしと伝わってきて、物悲しくも温かい気分にさせられる。

古き良き時代へのノスタルジーと映画愛に溢れたツァイ・ミンリャン監督の秀作。

映画に強い思い入れがある人にオススメ。